ビット・エラー・レート・テスターとは何か?
ビット・エラー・レート・テスター(BERT)とは、デジタル回路でエラーのないデータ伝送を行う方法をテストするための電子デバイスです。BERTは、パターン感度を測定することにより、デジタルシステムのBER(ビット・エラー・レート)を評価します。これらは、通信システムの開発で重要な意味を持つビット・エラー・レートのトレンドの評価に用いられます。
1990年代半ばにTelcordia Technologiesによって開発されて以来、これはシリアルリンクのテスト用の最も重要なツールの1つとなっています。BERTの目的は、デジタル回路をエミュレートして、そのエラーレートを測定することです。これにより、与えられたチャネルのデータ伝送の信頼性を解析できます。
この記事では、ビット・エラー・レートのテストについて、それが使用される理由、使用される方法、重要である理由など、知っておくべきことをすべて解説します。
BERTの主なアプリケーション
BERTは主に、デジタルリンクをテストして、デバイス間のエンドツーエンドの性能を評価するために用いられます。BERTは短時間で簡単にセットアップできるので、チャネルのどちらかの側に容易に接続して、テストを開始できます。これにより、高価な機器を使用しなくても、そのチャネルのデータ伝送の信頼性を評価できます。
BERTは使いやすく、短時間で結果が得られるため、高速シリアルリンクだけでなく、RS-232/RS-422/RS-423/V.35といったレガシー物理インタフェースのテストにも最適です。
BERTを使用すれば、データ伝送を行うさまざまな電子デバイスに対してビット・エラー・レート・テストを実行できます。最も一般的な用途は、次のような高速デジタルリンクの測定です。
- 衛星モデム
- セルラーモデム
- ルーター/スイッチ
- サーバー、ワークステーション、またはマルチポートリピーターのネットワークカード
ビット・エラー・レート・テスターの利点
エラーマッピングは、あらゆる通信システムおよびアプリケーションの重要な要素です。ビット・エラー・レート・テスター(BERT)は、さまざまなアプリケーションで信号伝送のエンドツーエンドの性能をテストするために用いられるデバイスです。これを使用すれば、データ信号のエラーを特定して訂正できます。
BERTは、デジタル信号の伝送を利用しているあらゆる組織にとって有用なツールです。これらの信号のエンドツーエンドの性能を正確にテストすることで、企業は通信が常に正常に動作していることを確認できます。
また、ビット・エラー・レート・テスターは、通信の問題のトラブルシューティングや、信号伝送の最適化のためにも利用できます。
Keysight M8020Aのようなテストセットを使用したBERTテストでは、最小フレーム・エラー・レートだけでなく、エラーが発生した時刻も知ることができます。
ビット・エラー・レート・テスターのタイプ
市販のビット・エラー・レート・テスターにはさまざまな種類があり、それぞれ独自の機能セットを備えています。BERテスターの一般的なタイプとしては、以下を対象とするものがあります。
- デジタル光信号
- 無線信号
- データ伝送
- ケーブル信号
どのように使用されるか?
通常は、複数の測定を実行できるように、被試験ラインのどちらかの側にプローブを接続します。ラインの両側をBERTに接続したら、実際のデータまたは1と0のパターンを使用してラインをテストできます。ある期間の結果を見ることで、このデータの送信中に重大なエラーが発生したかどうかがわかります。結果をプロットすることで、回路のビット・エラー・レート性能を時間軸上で見ることができます。
BERTの制限
BERTにも制限はあります。その例を次に示します。
- 一度に1つのデジタル回路しかテストできません。
- 接続されたデバイスのネットワーク全体をテストするには不便です。
- 結果を正しく使用または解釈する方法を知る必要があります。
- シリアルデータ伝送を使用するデジタルリンクのテスト専用に設計されています。
ビット・エラー・レート性能指標
ビット・エラー・レート性能指標とは、ある期間のデータ伝送の精度を表す測定値です。具体的には、ビットエラーの発生回数を伝送ビット数で割った値です。
これは、シーケンシャル測定または累積測定です。
- 累積測定では、正しくないビットの数を数え、全伝送ビット数に対する割合を求めます。
- シーケンシャル測定では、正しくないビットの総数を計算して記録します。
ビット・エラー・レートの正常/異常判定
異常なビット・エラー・レート(異常なBER)とは、エラーの数が多すぎるデータ伝送を指します。これは、ビット値(0または1)が誤っているビットの数だけを測定するものです。フレーミングエラーやパリティエラーなどの一般的なエラーに対する測定はありません。この種のエラーをテストするためには、別のツールが市販されています。
正常なBERとは、エラーの数が多すぎないデータ伝送を指します。一般的には、エラー数が100,000ビットあたり1以下の場合です。BERに影響する要因は数多くあり(使用するラインコードやプロトコル、ライン条件など)、この測定では発生しているエラーの種類はわかりません。このため、正常なBERとは何かを定義するのは困難です。
無線通信でのビット・エラー・レート
無線通信では、BERはデータパケット中で発生する伝送エラーの数を表す用語です。BERは通常、特定の期間内で計算され、時間変化を示すためグラフにプロットされます。
BERTを使用するもっとも簡単な方法は、機器のエンドツーエンドのテストです。デジタル回路の2つの端は、最大数メートル程度離れていることがあります。
1つの端をデジタル回路のどちらかの側に接続し、数秒から数分間ケースを実行して、エラーレートをチェックします。BERTに有意味なエラー数が表示されるまで時間を延ばしていきます。これが起きるポイントが、正常な信号と異常な信号の分岐点です。
BERTソフトウェア
です。これは内蔵テストユニットの場合もあります。これは通常ボックス状の機器で、片側にいくつかのD-Subコネクタ、反対側にDB-9またはRJ45ソケットを装備しています。BERTは、BERTソフトウェアと組み合わせて使用されるのが普通です。
このタイプのソフトウェアは、モデムとルーターなど、2台の機器の間のシリアルインタフェースのテストに使用できます。これは、既知のデータパターンを被試験デバイスに送り、両側でエラーを解析することによって動作します。BERが定義済みのしきい値を超えた場合、データリンクは不適合とみなされます。
ERテスターはハードウェアだけとは限りません。コンピューターやハンドヘルドデバイス上で、またはシステムに内蔵されて動作するソフトウェアプログラムの場合もあります。このようなBERテスターは通常、定期的に発生したデータパケットを被試験機器に送り、ビット・エラー・レートを測定します。
BERとS/N比
BERはある期間内の受信ビット数に対するビットエラー数の比を表すのに対し、S/N比は特定の時点で表されます。
言い換えれば、BERは時間とともに変動する値であり、非常に小さい(エラーなし)場合も非常に大きい(多数のエラー)場合もあるのに対し、S/N比は一定です。
IEEE 802.3イーサネット規格の場合、伝送速度は2ペアUTPケーブルで10 Mbpsであり、許容される最大BERは10-5*です。この規格のBER要件の意味は、S/N比が30 dBより大きい場合、エラーの数は100,000ビットあたり1ビットを超えてはならないということです。
正常なS/N比とは何か?
S/N比は、与えられたチャネルの信号レベルとバックグラウンドノイズの比です。S/N比は、正のdB値(30 dB、60 dBなど)で表されます。値が大きいほど、必要な信号がバックグラウンドノイズよりも強く、伝送エラーは少なくなります。
S/N比は、与えられたアプリケーションで要求される最小値よりも大きい必要があります。例えば、多くのEthernetアプリケーションでは、信号レベルが-40 dBm以上であることが要求されており、多くのデジタル電話システムでは-28 dBm以上が要求されています。
フレームドBERTとアンフレームドBERT
アンフレームド | アンフレームド |
---|---|
トランスミッターが送信するデータパケットはフレーミングフォーマットに制約される | トランスミッターが送信するデータパケットはフレーミングフォーマットに制約されない |
標準フレーミングフォーマットを使用する機器の性能評価に適する | 標準フレーミングフォーマットを使用しない機器の性能評価に適する |
オシロスコープ関連のその他の用語の詳細については、キーサイトオシロスコープ用語集を参照してください。
パケット損失
これは、DUT(被試験デバイス)が受信しなかったパケットの数を表します。エラーのない接続では、パケット損失が非常に少ないか0である必要があります。BERテストにより、システムの正常な動作を検証できます。
パケット・エラー・レートの公式は次のとおりです。
パケット・エラー・レート(PER)=(エラーがあった受信パケット数+パケット内のビットエラー数)/全送信パケット数
例:100個のパケットが送信され、うち10個にそれぞれ1個のビットエラーがあった場合、PERは0.01です。同じ100個のパケットに対して2 %のビットがエラーだった場合には、PERは0.02となります。
BERTを使用したイーサネットのテスト
イーサネットのBERテストは、イーサネットネットワーク内の信号伝送のエンドツーエンドの性能をテストするプロセスです。この種のテストは、ケーブル接続の障害、ネットワークカードの故障、ソフトウェアのエラーといった多くの一般的な問題のトラブルシューティングに使用できます。
イーサネットBERテストの仕組みは?
BERテストを実行するにはいくつかの方法があります。最も一般的な方法は、ネットワークを通じてテストパケットを送信し、結果を既知のサンプルと比較することです。このプロセスは、特別なソフトウェアを使用して自動化することも、BERTを使用して手動で行うこともできます。
用語集
レイテンシー | 信号が1つのポイントから別のポイントに伝搬するのにかかる時間。 |
ジッタ | パケットまたはビットのタイミングの変動で、レイテンシーの変化として表されます。 |
パターンジェネレーター | ビット・エラー・レート・テスター用のテストパターンを発生するために使用されます。 |
パターンディテクター | デジタル信号から特定のビットパターンを抽出する回路。 |
ビット・パターン・ジェネレーター | 伝送チャネルのビット・エラー・レートのテストに用いられます。 |
エラー・データ・セット | トランスミッターとレシーバーで発生したビットエラー。 |
擬似ランダムパターン | 一見ランダムだが、実際には決められたアルゴリズムによって作成されたビット列。 |
ビット・エラー・レート測定 | 通信やデータ通信で、単位時間あたりのビットエラー数を測定するために使用される手法。 |
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