デジタル・ストレージ・オシロスコープとは何か?
デジタル・ストレージ・オシロスコープ(DSO)は、電気信号を測定して記録する電子測定器です。アナログ信号をデジタル形式に変換し、デジタルメモリに記憶するので、信号を簡単にリコールして解析できます。
デジタル・ストレージ・オシロスコープはさまざまな用途に用いられます。医用生体工学では、心拍や脳波などの人体からの電気信号を測定するために用いられます。通信産業では、携帯電話などの通信デバイスのテストに用いられます。航空宇宙産業では航空機コンポーネントのテストに、自動車産業では車載用エレクトロニクスシステムのテストに用いられます。デザインエンジニアリングでは、デザインの性能検証に用いられます。
キーサイトのオシロスコープの詳細については、オシロスコープの基本ページを参照してください。
デジタル・ストレージ・オシロスコープのコンポーネント
デジタル・ストレージ・オシロスコープには、一般的に次の5種類の主要なコンポーネントがあります。
ディスプレイ
垂直入力チャネル
水平入力チャネル
トリガ
A/Dコンバーター
ディスプレイは、測定対象の電気信号を可視化するために使用されます。垂直入力チャネルは信号の振幅の測定に、水平入力チャネルは信号の周波数の測定に用いられます。トリガは測定プロセスの開始と停止に使用されます。
DSOの動作モード
デジタル・ストレージ・オシロスコープには、シングルショットと繰り返しの2つの動作モードがあります。
シングルショットモードでは、オシロスコープは1つの信号を捕捉して記憶します。繰り返しモードでは、オシロスコープは信号を継続的に捕捉して記憶します。
InfiniiVision 4000 Xシリーズ InfiniiVision 4000 X-Seriesデジタル・ストレージ・オシロスコープの特長
16ビットの垂直軸分解能
5 GSa/sの最大サンプリングレート
20 Mのレコード長
1,000,000波形/秒の更新レート
2または4のアナログチャネル+16のデジタルチャネル(MSOモデル)
わかりやすいユーザーインタフェースとコンテキスト依存ヘルプ
WaveGen任意波形ファンクションジェネレーター(オプション)
12.1インチ静電式タッチディスプレイ(一部のモデル用のオプション)
USBポートおよびLANインタフェース
キーサイトのアプリケーションソフトウェアの無料アップデート
InfiniiVision 4000 X-シリーズは、最大1.5 GHzの帯域幅、5 GSa/sのサンプリングレート、16のデジタルチャネル(MSOモデル)と、クラス最高の性能を備えています。InfiniiVision 4000 X-シリーズ オシロスコープは、21種類以上のトリガタイプとモードを備えた高度なトリガ機能を提供します。7種類の測定器の役割を1台で果たし、任意波形発生器、デジタル電圧計、周波数カウンターを内蔵しています。
Keysight Premium Used(プレミアム再生品)オシロスコープの最新の一覧については、製品リストページを参照してください。
DSOのトリガモード
トリガとは、オシロスコープが信号の捕捉と記憶を開始するための条件です。トリガは、オシロスコープに必要な信号だけを測定させ、不要な信号を記録させないようにする役割を果たします。
一部のデジタルオシロスコープでは、高度なトリガモードが提供されています。例としては、遅延、ピーク、ウィンドウトリガがあります。これらのトリガモードを使用すると、特定の時点でオシロスコープに信号の捕捉と記憶を開始させることができ、過渡現象の測定に役立ちます。
トリガモード | 概要 |
---|---|
遅延トリガモード | トリガイベントは、最初のトリガイベントから指定した時間内に発生する必要があります。このモードは、発生頻度が少ないイベントの捕捉や、プリトリガ/ポストトリガイベントの分離に有効です。 |
ピーク・トリガ・モード | 振幅が変動する繰り返し波形を捕捉します。トリガレベルはp-p振幅のパーセント値に設定され、オシロスコープはトリガレベルに最も近い立ち上がりまたは立ち下がりエッジでトリガします。 |
ウィンドウトリガ | トリガイベントは、指定した時間ウィンドウ内に発生する必要があります。このモードは、特定の時点で発生するイベントの捕捉や、プリトリガ/ポストトリガイベントの分離に有効です。 |
その他のtrigger modesトリガモードとしては、次のものがあります。
エッジトリガ
パルス幅
ビデオ
傾き
オルタネート
これらのトリガモードは、特定のイベントの捕捉や問題の特定に役立つ場合があります。
各トリガモードの詳細については、オシロスコープの使用法ガイドを参照してください。
Digital vs Analog Storage
DSOには、アナログオシロスコープに比べていくつかの利点があります。デジタルオシロスコープ
確度と精度が高い
ダイナミックレンジが広い
コンピューターに容易に接続してデータの記憶と解析が可能
アナログオシロスコープでは測定困難あるいは不可能な非常に高速な信号を測定可能
収集データの自動測定/解析が可能
Digital Storage vs Other Types of Oscilloscope
デジタル・ストレージ・オシロスコープ(DSO)は、アナログ信号をデジタル形式に変換し、デジタルメモリに記憶する電子測定器で、信号を簡単にリコールして解析できます。
リードアウトオシロスコープは、電気信号をメモリに記憶せず、画面上にリアルタイムで表示します。このため、リードアウトオシロスコープは、モニタリング用途に最適です。
デジタル 燐光オシロスコープ(DPO)も、DSOと同様、電気信号を測定して記録します。ただし、信号はメモリには記憶されません。信号は、陰極線管(CRT)*を使用して、リアルタイムで画面に表示されます。
シングルショットオシロスコープは、単発イベントの電気信号を測定して記録する測定器です。医用生体工学、通信、航空宇宙、自動車といった分野で多く用いられます。
ランダムスペースまたは等価時間オシロスコープも、医用生体工学、通信、航空宇宙、自動車といった分野で用いられます。これらのオシロスコープは、単一のイベントの電気信号を測定して記録します。
デジタル・ストレージ・オシロスコープ関連の一般的用語
用語 | 説明 |
---|---|
デジタル波形メモリ | デジタルデータを記憶します。DSOでは、測定対象の電気信号を記憶するために用いられます。 |
クロックドライブ回路 | DSOの動作に必要なクロック信号を発生するために用いられます。測定対象の電気信号の捕捉と記憶を制御するタイミング信号を発生します。 |
デジタルフィルタリング | 信号から不要な周波数を除去するために使用される信号処理の一種。DSOでは、ノイズやその他の不要信号を除去することで測定確度を上げるために用いられます。 |
再現可能な測定 | 繰り返し実行しても同じ結果が得られる測定。デジタルオシロスコープでこれが可能なのは、測定対象の波形を記憶し、後でリコールして解析できるからです。 |
メモリ長 | サンプル数で表されます。メモリに記憶できるサンプルの数は、一貫して増え続けています。最新のデジタルオシロスコープのメモリ長は、10億サンプルに近づいています。 |
仮想同期発電機 | 直流(DC)を交流(AC)に変換する電子デバイス。デジタルオシロスコープに電力を供給するために用いられます。 |
オシロスコープの詳しい用語集と、オシロスコープ機能の詳細な解説については、オシロスコープ用語集を参照してください。
*陰極線管(CRT)は、一部のオシロスコープで、測定対象の電気信号を表示するために使用されます。CRTでは、電子ビームを使用して画面上に波形が表示されます。