振幅変調とは何か?
AMラジオは、米国で初めて使用された無線通信方式でした。AMはAmplitude Modulation(振幅変調)の略で、搬送波の振幅すなわちパワーレベルを高速に制御することで、音声信号を低周波で伝達する手法です。
AM回路は、データ信号の変調に用いられる単純な増幅器です。データ変調とは、テキストメッセージや画像などの情報を信号に変換し、特定の伝送媒体を通じて伝送できるようにすることです。
この記事では、振幅変調の仕組みと、AM回路の特性について説明します。
振幅変調とは何か?
搬送波の振幅変調は、信号変調方式の1つであり、搬送波(無線周波数信号、RF信号)の振幅を別の波形によって変調するものです。
AMでは、情報を表す1つまたは複数の入力信号の振幅が変化するのに応じて、瞬時周波数が変動します。振幅変調は、搬送波の位相または振幅がメッセージ信号によって変調される場合に起こります。
AMは無線周波数での放送に多く用いられ、それ以外にも、電話、モデムなどのデータ伝送システム、磁気記録、一部のアナログビデオ装置などに使用されています。
振幅復調は、振幅変調の逆のプロセスです。このプロセスでは、ピークまたはp-p電圧が変調された入力信号を受信し、波形に含まれる情報を抽出し、搬送波周波数を除去/低減することによりデジタル表現を作成します。
振幅変調はなぜ今日でも使用されているのか?
- AMは忠実度が高いため、放送用に広く用いられています。
- 複雑な復調器を必要とするFMと異なり、AMは単純なチューナーで受信できます。
- AM信号はノイズの影響を受けやすいという特徴があります。
振幅変調には欠点があるか?
振幅変調にはいくつかの欠点があります。
- AM信号はノイズの影響を受けやすいので、長距離や低品質のオーディオ機器には適しません。
- 信号にベースバンド周波数成分が付加されることで複数チャネルでの伝送が起きるため、パワーの無駄が生じます。
AM通信システム
AM通信システムは、振幅変調を使用して情報を送受信するデバイスのネットワークです。
世界無線通信会議(WRC)では、電磁放射に関する規格を定めています。この規格では、何十年にもわたり、p-p電圧と、与えられた周波数レンジで伝送される情報量の間の関係が定義されてきました。
例:搬送波の周波数が100 MHzで、p-p電圧が1 Vの場合、±1 Vの電圧変化では情報は伝送されません。
ここで、より多くのデータを伝送する唯一の方法は、振幅変調を使用することです。
音響信号から自動車内の音声波へ
AM無線機のパワー計算は、無線局からのパワーを必要な振幅に変換することで、カーラジオや家庭のAMラジオで音を聞けるようにするプロセスです。この変換は「包絡線検波器」によって行われます。これは、信号のエンベロープを検出し、オーディオ波形として出力するものです。
AM変調度あるいはAM変調指数を測定するには、オシロスコープが使用できます。そのためには、入力を正弦波に設定し、垂直軸スケールを1目盛りあたり5 Vに設定し、AMラジオアンテナの外部リングの1つにプローブを接触させます。
オシロスコープの詳しい使用方法については、オシロスコープの基本を参照してください。
振幅変調はどのような回路で用いられるか?
AMでは、1つの波形を使用して別の波形の強度を変化させます。結果の波形は、使用する方法と、組み合わせる波形の種類に応じて、異なる特性を持ちます。
振幅変調を発生するには、次のようないくつかの方法があります。
- 位相変調
- 周波数変調
- インピーダンス変調
それぞれの方法は、デジタルラジオ放送や電話回線でのファクス送信など、さまざまな目的に使用できます。
振幅変調の種類
- 単側波帯変調(SSB)は、情報の伝送に使用される振幅変調(AM)の方式の1つです。最も一般的なSSBアプリケーションの場合、変調された搬送波の1つの側波帯だけが送信されます。
「単側波帯」という言い方は、2つの側波帯とその鏡像、すなわち「上」側波帯と「下」側波帯のうち1つだけが送信されることを意味します。
特定の周波数の搬送波は、情報を含む信号を伝送します。SSB伝送の場合、この搬送波は抑圧され、伝送されるのは、上または下の側波帯と、必要な情報をすべて伝送するのに十分なもう1つの側波帯の部分だけです。 - ハム変調は、AMラジオを使用する際に聞こえることがあるバックグラウンドノイズすなわち「ハム」を表す用語です。
デバイスのアンテナは局からの搬送波を捕捉し、内部回路を通じて伝搬させます。この伝搬は、浮遊信号や誘導性負荷など、さまざまな要因によって妨害されます。これにより送信される情報に歪みが生じ、低周波のハムが発生します。 - QAM(Quadrature AM)は、同相と直交位相の2つの搬送波を使用してデータを伝送するデジタル通信技術です。これは情報伝送のための一般的な方法であり、テレビ放送からWi-Fi信号まで、さまざまな用途に用いられています。
振幅変調波
振幅変調波とは、p-p電圧を増減させることでより多くの情報を伝えられるようにした搬送波です。
例えば、「1」を表す電圧または電流が、「0」を表す電圧または電流よりも大きいレベルになるように、入力信号に基づいて搬送波の振幅を変化させることができます。搬送波の振幅を変化させることで情報量を増やし、他の方法よりも多くのデータを伝送することができます。
p-p振幅とは何か?
p-p振幅とは、信号の最大電圧の絶対値を指します。
例:振幅が10 Vの正弦波のp-p振幅は20 Vになります(波形の最も高い点が10で、20はその倍)。
多くのオシロスコープでは、専用の回路を追加することで、平均(RMS)電圧に加えてp-p電圧を測定できます。
メタ表面と振幅変調
メタ表面とは、電磁波の位相、偏波、振幅などを変化させることで、その伝搬を制御する機能を持つ人工構造です。
例えば、アンテナにメタ表面を取り付けて波の挙動を制御することで、ノイズを打ち消したり、干渉を20 dB(10 log[10]の10倍小さい)減らしたりすることができます。
振幅変調とオシロスコープ
オシロスコープの振幅確度は、ディスプレイの垂直軸(Y軸)が入力波形の実際の電圧にどの程度近いかを表します。波形の振幅を測定するには、標準偏差が用いられます。標準偏差が大きいほど、波形は広い範囲に広がっています。
例:100 MHzの搬送波に対して10Xプローブを使用し、オシロスコープに波形を表示した場合、±0.1 Vより大きい電圧変化は±10 Vとして表示されます。これは、Y軸がX-Yモードを通じて10倍に拡大されるからです。表示が入力信号に正確に一致するほど、信号の周波数やパワーといった特性の測定確度は高くなります。
オシロスコープとスペクトラム・アナライザの振幅の違い
オシロスコープは、もともと電子信号の振幅測定を目的に設計されましたが、時間とともにさまざまな目的に使用されるようになりました。
一方、スペクトラム・アナライザは一般的に、パワーや周波数といった信号の特性を正確に測定するため、帯域幅が広く、ノイズフロアが小さい入力を備えています。
オシロスコープをスペクトラム・アナライザの入力チャネルに接続すると、振幅(信号強度)をオシロスコープに表示し、周波数あるいはスペクトラム情報をスペクトラム・アナライザに表示できます。これにより、SDR IQデータなどの信号を、わずか2台の測定器を使ってコンピューター上で解析でき、多数の測定器を使用する必要がなくなります。
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