アナログ信号とは何か?意味と定義
信号とは、データの電気的表現です。信号は、メッセージ、画像、音声、測定値、その他値の組として定義されるあらゆるものを表すことができます。
この記事では、アナログ信号とその処理方法、およびアナログ信号の処理に使用されるツールについて説明します。アナログ信号はデジタル信号とどのように違うかというと、アナログ信号は連続的で、データポイントの間隔は無限に小さく取ることができます。デジタル信号は離散的で、一定の間隔で値が並んでいます。
アナログ電気信号とは何か?
アナログ信号とは、時間とともに変動する何らかのパラメータに従って連続的かつ無限に変化する電圧、電流、またはその他の物理量です。例えば、無線電波、テレビ電波、音波などはすべてアナログ信号の例です。
アナログ信号には次の2種類があります。
- 連続時間信号:時間の連続的関数を連続時間信号と呼びます。最も一般的な例は正弦波です。
- 離散時間信号:一定の時間間隔で区切られた実数(サンプル)の列を離散時間信号と呼びます。一般的な例としては、デジタルオーディオ信号があります。これは、一定の時間間隔での瞬時振幅の系列を表します。
アナログ信号処理
アナログ信号処理とは、電子デバイスを使用して、連続的なアナログ信号に、増幅、フィルタリング、制限などのさまざまな操作を加えることです。行われるのは連続時間処理であり、量は時間とともに連続的に変化します。
アナログ信号処理に使用されるツールとしては、オシロスコープ、電源、ファンクションジェネレーター、信号発生器、RFアナログ信号発生器などの電子テスト機器が挙げられます。
- オシロスコープ:オシロスコープは電子テスト機器の一種で、電気回路の動作をリアルタイムで観察するために使用できます。被試験回路からの入力信号は、入力チャネルからオシロスコープの「水平軸」入力に送られ、画面上に波形として表示されます。
- 電源:低電圧、大電流の電圧を、より使いやすい形式に変換する電子デバイス。
- ファンクションジェネレーター:ファンクションジェネレーターは、波形を発生する電子テスト機器です。他の電子テスト機器の動作をテストしたり、耳で聴くか測定するためのオーディオ信号を発生したりするために使用されます。ファンクションジェネレーターの多くは、フロントパネルのボタンでさまざまな波形を切り替えることができます。波形のタイプとしては、正弦波、のこぎり波、三角波、方形波、パルス波、ランプ波などが挙げられます。
- アナログオーディオ信号発生器:エレクトロニクスで用いられるオーディオ信号発生器とは、オーディオ周波数レンジの電気信号を発生する電子テスト機器です。信号は通常、電圧制御発振器またはパルス列から作成され、増幅器を通ってスピーカーに送られることで、必要な音声を発生します。
- ファンクションジェネレーター:ファンクションジェネレーターは、波形を発生する電子テスト機器です。他の電子テスト機器の動作をテストしたり、耳で聴くか測定するためのオーディオ信号を発生したりするために使用されます。ファンクションジェネレーターの多くは、フロントパネルのボタンでさまざまな波形を切り替えることができます。波形のタイプとしては、正弦波、のこぎり波、三角波、方形波、パルス波、ランプ波などが挙げられます。
- RFアナログ信号発生器:RFアナログ信号発生器とは、正弦波、方形波(パルス波)、のこぎり波、三角波などの信号を発生して印加するためのテスト機器です。指定したレンジ内で周波数を掃引するためにも使用できます。
アナログ信号の測定
アナログ信号源の振幅はボルト単位で測定され、アナログ信号の周波数はヘルツ単位で測定されます。正弦波のp-p電圧振幅の単位はボルトと呼ばれます。電圧と電流(アンペア単位)の間の関係は、オームの法則:電圧=電流×抵抗によって表されます。
電圧は、エネルギーの最も一般的で便利な形態の1つです。電流などの他のタイプのエネルギーに比べて、必要なスペースが少ないからです。
アナログ信号から得られる情報
アナログ信号には次の3種類の情報が含まれます。
- 振幅
- 周波数
- 位相
振幅:AC正弦波の電圧は、p-p値と平均値の両方に比例します。例えば、周波数が同じで振幅が異なる2つの正弦波がある場合、先に振幅を正規化しておかない限り、オシロスコープで2つの波形は区別できません。各電圧測定値を信号の振幅で割ることにより、電圧を独立変数として使用できるようになります。
周波数:波形の角周波数とは、振動が1秒間に進むラジアン数であり、単位はヘルツ(サイクル/秒)です。例えば、振幅が同じで周波数が異なる2つの正弦波がある場合、先に振幅を正規化しておかない限り、オシロスコープで2つの波形は区別できません。各周波数に対応する正規化された振幅測定値を乗じることで、周波数を独立変数として使用できるようになります。
位相:位相は、周波数と振幅が一致する別の波形を基準として、波形が時間的にどれだけ「遅れている」あるいは「進んでいる」かを表します。波形がサイクルのどの時点にいるかを表すと考えることもできます。
オシロスコープを使用したアナログ信号の測定
アナログオシロスコープは、時間変化するアナログ信号を画面上に波形として表示するための測定機器です。画面に表示する波形は、AC(交流)信号でもパルス状のDC(直流)信号でもかまいません。
- AC信号とは、電圧または電流の極性が繰り返し頻繁に切り替わる信号です。
- DC信号とは、電圧または電流の極性が一定の信号です。
デジタルオシロスコープとは、波形をデジタイズして画面上に表示する測定器です。デジタルオシロスコープは、サンプリングの原理を使用してアナログ信号を測定します。入力信号が離散的な時間ポイントでサンプリングされ、得られたサンプルがX軸(時間軸)に対して電圧レベルとしてプロットされます。
アナログ信号は垂直偏向と水平偏向のどちらを使っても表示できますが、デジタル信号の表示には水平偏向だけが使用できます。
帯域幅と速度に関しては、アナログオシロスコープはデジタルオシロスコープに比べて帯域幅が広い一方で掃引速度が低く、デジタルオシロスコープは帯域幅が狭い一方で掃引が高速であるという傾向があります。また、アナログ信号の性質上、オシロスコープは画面を更新するたびに波形を再構築する必要があるため、測定と測定の間に遅延が生じ、オシロスコープの帯域幅と速度に影響します。
オシロスコープによる電圧信号の測定
電圧信号の測定は振幅によって行われます。これは強さまたは強度と呼ばれることもあります。電圧信号は通常、グランドを基準として測定されます。基準点があるほうが測定しやすいからです。実験には正と負の両方の電圧が用いられる場合があるため、波形の両方の極性を同時に表示できるように、オシロスコープはモニターする入力のそれぞれに対して2つの垂直チャネルを持つ必要があります。
アナログオシロスコープのコントロール
アナログオシロスコープのコントロールとは、入力信号の画面上への表示方法を制御するさまざまなオプションです。コントロールには次のようなものがあります。
- 垂直軸利得
- 水平軸タイムベース
- トリガモード
- マーカー設定
垂直軸利得コントロールは、信号の振幅がオシロスコープの画面上で上または下に移動する際にどれだけ変化するかを調整するノブです。デジタル信号に対してはこの調整は不可能です。方形波はすべて無限大の振幅を持ち、2つの電圧ステート(正と負)の間で常に切り替わっているからです。
水平軸タイムベースは、1つの波形が完了してから新しい波形で画面を更新するまでのオシロスコープの待ち時間を制御します。これは、入力信号がアナログかデジタルかによって異なり、"A"および"µs/DIV"というラベルのプリセットボタン、または"1X"および"10"というラベルのノブによっても制御できます。
トリガモードは、入力信号の重要な部分を検出した後で、オシロスコープが画面の更新をトリガする方法を制御します。入力信号がアナログかデジタルかに応じていくつかのモードが使用でき、各トリガモードに対応して、"AUTO"、"EXT TRIG"、"INT TRIG"というラベルのボタンがあります。
マーカー設定は、入力波形の上に表示できる電圧の数と、これらの電圧をドットとチック(時間単位を表す)のどちらで表示するかを制御します。
キーサイトのオシロスコープに関する包括的ガイドについては、オシロスコープの基本をご覧ください。キーサイトの新品および再生品オシロスコープの特長と基本機能が解説されています。最大80 %引きの再生品オシロスコープの一覧については、再生品ポータルをご覧ください。
主な用語
デューティーサイクル | デューティーサイクル(%)は、波形の周期の逆数に100を掛けることによって得られます。 |
立ち上がり時間 | 立ち上がり時間は、信号があるステートから別のステートに切り替わる速さを表します。立ち上がり時間はデジタル信号のみに当てはまります。アナログ信号は2つのステート(正/負)の間で連続的に切り替わるので、その性質上立ち上がり時間は0だからです。 |
立ち下がり時間 | 立ち下がり時間は、信号があるステートから別のステートに切り替わる速さを表します。立ち上がり時間と同様、立ち下がり時間はデジタル信号のみに当てはまります。立ち上がり時間と同様、アナログ信号はその性質上、立ち下がり時間が0だからです。 |
周波数成分 | アナログまたはパルス入力のみに当てはまります。正弦波は本質的に周波数情報を含んでいるからです。 |
クレストファクター | オシロスコープのX軸に対して表示されたときに、信号のピーク値が平均値に対してどれだけ大きいかを表す値。そのため、十分大きい振幅を持つ電圧および周波数のみに当てはまります。 |
帯域幅 | 帯域幅とは、電子信号が通過できるレンジを表します。 |
ノイズレベル | ノイズレベルとは、デバイスまたは回路が増幅可能な周波数の範囲を表します。 |
アナログ周波数 | ベースバンド信号とも呼ばれ、デジタルデータの伝送を変調する連続波です。 |
アナログ信号用マルチプレクサー | アナログ信号に対して使用されるデバイスで、複数の信号を結合して信号の帯域幅を共有できるようにします。 |
アナログ信号遅延回路 | 入力電気信号を一定時間記憶し、後で、または別の電圧レベルで出力する機能を持ちます。 |
アナログ信号増幅器回路 | アナログ信号の強度を増幅するデバイス。オシロスコープやファンクションジェネレーターといった測定器では何種類かの回路が用いられており、それらはリニア構成とノンリニア構成に分けられます。 |
アナログ信号変調 | 信号の振幅、周波数、または位相を直接変更することによって伝送する方法。単純な例としては、AMラジオ電波を通じて送信される正弦波が挙げられます。 |